研究内容紹介。「貯蔵中の湿度制御による水なすの品質保持」について。

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研究内容

「貯蔵中の湿度制御による水なすの品質保持」

大阪府立食とみどりの総合技術センター 食品・資源部 品質科学グループ研究員 橘田浩二
堺共同漬物株式会社 日下光司

堺共同漬物株式会社では、産官共同による伝統野菜の研究に取り組んでいます。ここではその研究内容の一部をご紹介しております。

1.はじめに

水なすは大阪府南部の泉州地域を中心に生産されている卵形の一地方品種である。近年、原材料の果皮の柔らかさと果肉のみずみずしさを生かした高品質浅漬「水なす漬」の原材料として人気を博し、この7年間で共販出荷量が倍増した。

水なすは大阪府の南部という非常に限られた地域でそのほとんどが生産されているため、流通量が雨・風などの天候に影響されやすい。たとえば、なすの中でも特に果皮が柔らかい品種であるため、露地栽培では強風によって葉が果実を摩擦しただけで傷物になってしまう。そのため、強風の影響後の数日間は、露地栽培の水なす漬に適した高品質等級商品の出荷量が激減する傾向にある。一方、水なす漬製造業者では、スーパーなど小売店からの需要に対応すべく、流通量が少ないときでも原材料の水なすを大量に確保する必要がある。

一般になすの貯蔵では、低温障害や光沢・張りの消失が問題とされる。低温障害については貯蔵適温を維持することによって回避できる。一方、光沢・張りの消失は蒸散によるものであり、蒸散抑制のために一定の湿度を保つ必要がある 1)。しかし通常の冷蔵庫では安定した高湿度を保つことが難しいとされているが、近年、壁面冷却式冷蔵庫利用により、95%以上の高湿度を容易に維持可能な鮮度保持技術の向上事例2、3)が多数報告されている。

そこで、強風など天候に左右されない水なすの安定供給を図るため、壁面冷却式冷蔵庫の利用を念頭に、目標期間を1〜2週間とした高湿度環境による貯蔵技術について検討した。また,水なすは漬物用原材料としての利用が多いため,貯蔵後の水なすの漬物加工適性に対する影響を調査し、さらに、筆者らが開発した水なす漬のなす紺発色促進技術による改善について検討したので報告する。

2.高湿度貯蔵による水なすの鮮度保持

水なすの貯蔵に関して、湿度環境が鮮度保持効果に及ぼす影響について調査した。ここでは、貯蔵温度を12℃前後とし、低湿度貯蔵区として相対湿度約80%環境を、高湿度貯蔵区として約98%環境をそれぞれ設定した。調査項目として、貯蔵中における重量変化率、達観評価による光沢度を調査した。

(1) 重量変化

水なすを低湿度環境下で貯蔵した場合には、なすからの蒸散によって経日的に重量が減少していった。一方、高湿度貯蔵では、出荷箱包装をしたため、水なすの雰囲気の気温や湿度が設定条件に達するのに約1日を要した分、1日目までにわずかに重量が減少した。しかし、その後はほぼ変化なく14日目まで推移した。

(2) 光沢度の変化

貯蔵7日目ごとに3名のパネリストによって水なす表面の光沢度を達観により評価したところ、低湿度貯蔵区では最初の7日目で光沢がほぼ半減し、いわゆるつやなし果になったのに対し、高湿度貯蔵区では、14日目に至ってもほぼ3(収穫時と同レベル)の評価を得た。また、低湿度貯蔵区では、実際には3日目でつやの消失が観察されていた。 以上より、貯蔵適温である12℃前後の貯蔵において、低湿度では重量や光沢などの品質が低下していくが、相対湿度が約98%の高湿度ではそれらの品質項目に関して14日後でも影響がないことが明らかになった。

3.高湿度貯蔵が漬物加工適性に及ぼす影響

水なすは漬物加工適性が高いため、その多くが漬物として食される。そこで、前述のように低湿度あるいは高湿度環境で貯蔵した後の水なすを用い、一定濃度の塩水に一定期間漬込んだ後、ナトリウム(Na)の浸透量を調査した。

(1) ナトリウム浸透量に対する影響

その結果、低湿度貯蔵では貯蔵期間が長くなるとNa浸透量が低下するのに対し、高湿度貯蔵では14日後になってもNa浸透量に対する影響はみられなかった。

(2) 水なす漬のなす紺発色を促進する技術

しかし、実際に1〜2週間の貯蔵後の水なすを漬込んだところ、貯蔵湿度に関わらず、漬物の果皮表面のほとんどが紫色のままとなりなす紺が発色しない場合があった。なす紺は原材料中のアントシアニン色素が漬液中のアルミニウムや鉄のイオンと結合して安定なメタロアントシアニンになったときに呈する色であり4)、水なす漬にとって必須の外観品質項目である。そこで、なす紺を発色させるために、筆者らが開発した「摩擦処理」の適用5)を試みた。

この処理は、漬込み工程の前に、特殊な摩擦処理を行い、果皮の表面をごく軽く傷つけるものである。摩擦処理後の果皮表面には、直径20μm弱の穴が開いているが、その穴は肉眼では見えないため、外観品質を損なうことはない。

それぞれの湿度環境で貯蔵した水なすを摩擦処理後に通常の方法で漬込んだところ、低湿度貯蔵後の水なすでは紫色や茶色の部分が混在し、発色不良となったのに対し、高湿度貯蔵後のものでは鮮やかななす紺が発色し、収穫直後に漬込んだものと同等にすることができるようになった。水なす漬では、果皮に紫色や茶色の部位があると、そのほとんどは商品性がないものとして廃棄される。すなわち、低湿度貯蔵した場合には、水なす漬加工原材料として利用できなくなってしまったが、高湿度貯蔵した水なすは摩擦処理を行うことによって漬物加工適性を維持することができたと考えられる。

4.まとめ

近年における需要の拡大に対応して、水なすの生産量は増大している。しかし、主たる産地が大阪府泉州地域のみという現状のため、天候によって生産量が大きく変動しやすい。流通・加工業界にとって、顧客に応える安定供給は最重要課題の一つであることから、貯蔵技術の向上によって生産量の変動に対応する方法は非常に効果的であると考えられる。

相対湿度約98%の高湿度貯蔵をすることによって、水なすは約2週間まで鮮度保持が可能となった。しかし、そのように貯蔵した後の水なすは漬込み後の外観色が悪くなる場合があった。そこで、漬込み前に摩擦処理を行ったところ、なす紺の発色が促進され、外観色の悪化が改善された。

以上のことから、高湿度貯蔵及び摩擦処理の併用は、水なす及びその漬物の安定供給体制に寄与できるものと考えられた。

参考文献

  1. 池田浩暢・石井利直・茨木俊行・太田秀明:雰囲気湿度条件および出荷資材がなす果実の品質に及ぼす影響.日本食品科学工学会.49(7).462-467.(2002).
  2. 田中敬一:新貯蔵方式冷蔵庫における果実の鮮度保持効果.農流技研会報.210.13-16.(1997).
  3. 椎名武夫:壁面冷却式冷蔵庫による'南水'の長期保蔵.フレッシュフードシステム.28(4).49-52.(1998).
  4. 津久井亜紀夫・林 一也:アントシアニン―食品の色と健康―Vアントシアニンの原料および食品加工利用.建帛社(東京).57-102.(2000).
  5. 橘田浩二:漬込み前のもみ殻摩擦処理による水なす漬の色むら防止技術.近畿中国四国地域における新技術.36.
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